『Strawberry Parfait』

 

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「あっま」

「文句言うなら食べるんじゃないわよ」

 

 人間の顔ほどはあろうかというサイズのグラスに盛られたイチゴパフェを横取りしながら、藤波が眉根を寄せる。日曜日という貴重な時間を何故こんな男と過ごしているのだろうか、あたしは。

 

「だからさぁ、来週にはヒサギもティスナも退職しちゃうんだよー!?」

「んなこと俺に言っても仕方ねぇだろ」

 

 時刻は午後三時。大きく開かれた窓から入り込む風があたしたちの間を吹き抜けていく。もはや店員から常連客だと認識されているであろうカフェはそこそこに賑わっていて、あたしのお気に入りのテーブルは他の客に取られてしまっていた。

 

「あんたはティスナに会えなくなっても寂しくないの?」

「そりゃ寂しいけどよ、あいつの選んだ道なら応援してやりたいからさ」

 

 出勤すれば二人に会えるという当たり前の日常が当たり前でなくなる日が、すぐそこまで来ている。あまり考えないようにしていたのに、暇な休日を持て余してなんとなくこいつを誘ってなんとなく話し始めたら一気に喪失感が押し寄せてきてしまって。

 

「はぁ……あんた意外と大人よね。さーびーしーいー!」

 

 テーブルに顔を突っ伏して駄々っ子のように脚をばたつかせてみても何も変わらないと、分かってはいるのだけれど。

 

「……俺も、兄貴も、いるだろーが」

 

 手元のアイスコーヒーをかき混ぜながら、藤波がぽつりと呟く。

 

「その……、なんだ、ガロンだって、エドガーだって、他の奴らだってよ」

「……っふふ。珍しい。励ましてくれてるの?」

 

 視線がこちらではなく窓の外に向けられているのが実に彼らしくて、思わず笑ってしまった。本人も似合わないことを言った自覚があるのだろう。頬杖をついたまま、なんとも複雑な表情をしている。

 

「藤波、ありが……」

「それ、もっと寄越せ」

「はっ?」

「励まし料だよ、パフェもっと食わせろ」

「あ、ちょ、そんないっぱい、ちょっと!あたしのイチゴパフェ!!」

 

 甘すぎるってケチつけたくせに。

 あとで胸焼けしたって知らないんだから。

 

 ──まぁ、お礼はまた今度ってことでいいか。

 心の中でそう結論付けると、あたしは感謝の言葉を生クリームと一緒に喉の奥へと放り込んだ。

 

 これからもよろしく、先輩。

 

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